コリオリの力

コリオリの力とは、地球のような自転している座標系の上で運動する物体に働く、見かけの力のことだ。実際に何かを引っ張ったり押したりする力があるわけではなく、観測者が自転する系の中にいるためにそう見える現象を指す。この力は、物体の運動方向に対して常に直角に作用し、北半球では進行方向の右向きに、南半球では左向きに働くのが特徴だ。
例えば、北極点から赤道に向かってまっすぐボールを投げたとしよう。ボールは宇宙から見ればまっすぐ飛んでいくのだが、自転している地球上の私たちから見ると、ボールはだんだん右にそれていくように見える。これは、ボールが飛んでいる間に、地球の地面がボールの下で左(東)へ動いてしまうためだ。
このコリオリの力は、地球規模の現象に大きな影響を与えている。特に、大気の流れ(風)や海洋の海流の向きを決定づける重要な要因となっているのだ。例えば、低気圧や高気圧の周りで風が渦を巻くのも、このコリオリの力が働いているからである。北半球の低気圧が反時計回りに、高気圧が時計回りに風が吹くのは、まさにコリオリの力の効果だ。また、台風やハリケーンといった熱帯低気圧が渦を巻くのも、この力が関わっている。
コリオリの力は、物体の速さが速いほど、また緯度が高い(赤道から離れる)ほど大きく働く。そのため、地球の自転速度が速い赤道付近では、水平方向のコリオリの力は小さくなる。しかし、緯度が高くなるにつれてその影響は顕著になり、私たちの住む場所の気象や海洋環境を理解する上で欠かせない概念となっている。

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