熱帯収束帯とは、赤道付近に東西に長く伸びる、文字通り南北からの風が収束する帯状の領域のことだ。英語ではITCZ(Intertropical Convergence Zone)と略される。
この帯は、地球の大気大循環であるハドレー循環において、最も空気が暖められて上昇する場所に対応している。赤道付近では太陽からの日射が最も強く、地表の空気が暖められて軽くなり、上昇気流が発生する。この上昇気流によって地表の気圧が低くなり、周囲(亜熱帯高圧帯)から「貿易風」と呼ばれる風が吹き込んでくる。北半球からは北東貿易風が、南半球からは南東貿易風が吹いてきて、赤道付近で合流し、その場で上に押し上げられるため、「収束帯」という名前がついている。
熱帯収束帯の特徴は、年間を通して活発な上昇気流が存在することである。このため、空気が上昇する過程で冷やされ、含まれる大量の水蒸気が水滴となって積乱雲が発達しやすい。その結果、熱帯収束帯が位置する地域では、スコールのような激しい雨が頻繁に降り、年間降水量が非常に多くなる傾向がある。地球上の熱帯雨林の多くがこの帯状の地域に分布しているのは、この気象条件によるものだ。
また、熱帯収束帯は季節によってその位置を南北に移動させる。例えば、北半球の夏には太陽が北寄りに移動するため、熱帯収束帯もやや北上し、南半球の夏には南下するといった具合だ。この位置の変動が、各地の雨季と乾季のサイクルに大きく影響を与えている。さらに、この熱帯収束帯の活発な雲域の中から、熱帯低気圧や台風(ハリケーンなど)が発生することもある重要な場所である。
熱帯収束帯
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